結婚式場スタッフとしての経験(マナー、ルール編)

ブライダルプランナー

結婚式場のスタッフは、常に緊張感を持って仕事に臨んでいます。それは、高額な料金をお支払いいただくからという理由だけではありません。お客様の人生における大切な瞬間をお手伝いするという重大な責任を伴うからです。どんなに小さなミスも許されないというプレッシャーが、現場には常にあります。

ピリピリとした緊張感と「間違い」のない対応

平日はお客様や各部署との打ち合わせがメインですが、土日祝日になると、当日の段取りを何度も確認し、ミスがないように全スタッフが慎重に準備を進めます。「間違い」という言葉を完全に排除した状態でお客様を迎えることが求められるのです。

私が経験した忘れられない出来事の一つとして、支配人と一緒にお客様のご自宅まで謝罪に伺ったことがあります。内容自体は「間違い」ではなかったのですが、お客様のご理解を得るまでに時間がかかり、正座をして3時間余り話し合いを続けました。最終的にはご納得いただき、結婚式を無事に終えた後には感謝の言葉までいただけましたが、当時は「お客様は神様」という風潮が強く、精神的に追い詰められる場面も多々ありました。

礼儀礼節の厳しい指導

結婚式場では、接客の礼儀やマナーが非常に厳しく指導されます。専門の教官を招いて、尊敬語や謙譲語の正しい使い方を学びます。それだけではなく、結婚式場特有の言葉遣いにも注意が必要です。例えば、再婚を連想させる重ね言葉(例:「少々お待ちください」など)は、使わないよう指導されます。

お辞儀のスピードや角度、手の位置、お客様を誘導するときの立ち位置なども細かく指導されます。このようなトレーニングを受けたスタッフは、洗練された立ち居振る舞いを身につけ、性別を問わず魅力的な存在としてお客様に映るのです。

新郎新婦との深い関わり

結婚式場スタッフとして、お客様とは婚礼当日までに何度も打ち合わせを重ねることがあります。時には1年以上の期間をかけて関わることもあり、自然と新郎新婦やご家族と親しくなることも珍しくありません。

婚礼当日、バックヤードで涙を流すスタッフを見かけることもありますが、そこは気持ちを抑え、最後までプロフェッショナルとしての振る舞いを貫きます。そして、ご両家の皆様に挨拶をした後、新郎新婦に「この度はおめでとうございます。末永くお幸せに」と声を掛けてお見送りをすると、ようやくスタッフ全員の緊張が解けるのです。

結びに

結婚式場での仕事は、責任感が問われ、常に緊張感が伴います。しかし、新郎新婦やご家族の笑顔を見られる瞬間は何ものにも代えがたい喜びです。この仕事を通じて得られる達成感は非常に大きく、結婚式場スタッフとして働くことのやりがいを実感します。

結婚式という特別な場面を支えるスタッフの努力を知ることで、式の裏側にある真心や細やかな配慮に気付いていただけたら幸いです。

記事監修

イデアス株式会社

大阪市淀川区にて40年以上にわたり礼服の製造・開発に取り組んできた実績を受け継ぐ企業。すべての縫製工程は日本国内で行われており、車椅子用のユニバーサルデザインモーニングコートや脚長効果のあるヒールアップシューズのレンタルサービスも展開。結婚式や各種式典で使用されるフォーマルな衣装を、品質に強いこだわりを持ち提供。

執筆者

大谷真司 イデアス株式会社代表取締役

タキシードレンタルドットコム」の最高責任者。

  • 1990年 大阪の総合結婚式場において洋装部の責任者としてキャリアを開始。
  • 1995年 全日本冠婚葬祭互助協会の2級冠婚士資格を取得。
  • 1996年 法人向け貸衣装部の責任者に就任。
  • 2006年 独立。宅配レンタル専門の「タキシードレンタルドットコム」を創業。
  • 2016年 日本フォーマル協会のフォーマルスペシャリストゴールドライセンスを取得。